香月院深励師の『夏御文』についての講録
製本発注 | 3,600円 | 夏御文講義 | 236頁 |
『夏御文講義』について
国立国会図書館デジタルコレクションでは「夏御文講義」にてヒットします (こちら)。和本では上下巻の2冊本ですが製本化する際にまとめて1冊にしました。全部で236頁となっていて結構読み応えがあります。この講録 (講義録) は『真宗体系』や『続真宗体系』等には収録されていません。この和本でしか読めない深励師の講義となっています。
『夏御文』とは
御文 (おふみ) はお西 (本願寺派) では御文章 (ごぶんしょう) と呼ばれています。でも元は御文と呼ばれていましたのでこの御文の方が呼び方は古いです。江戸時代の初期の頃にお西は呼び方を改めました。この本でも呼び方のことが出てきます。西六條 (お西のこと) では御文章と呼ばれているということが出てきます。お東ではずっと今でも御文と呼ばれています。
『夏御文』は蓮如上人の出されたお手紙の中で編纂された中でも本山用のちょっと特別な御文として扱われています。この4通の夏御文と御俗姓を除いた80通が帖内御文として一般寺院に開版されて各寺院に置かれています。この辺りの事はこちらのHPに説明が詳しいです。
お西 (本願寺派) 本山ではこの夏御文 (夏御文章) は5月15日から8月15日までの一夏九旬の間、毎日正午に御堂で拝読されます。本願寺派では第17代法如宗主が4通目の後半の内容がそれまでと趣が違うことから第4通を2軸に分けて合計5軸として拝読がされます。5月15日から7月25日頃までは第1軸~第4軸が毎日1軸ずつ繰り返し読まれ、それ以降は第1軸~第5軸が繰り返し読まれて8月15日に第5軸が読まれて一夏の拝読が終わるようになっています。
『夏御文』の内容的な特徴
御文は蓮如上人が門末に宛てて出されたお手紙なので相手がいます。門徒だったり僧侶だったりして内容からもどのような人たち宛なのか推察できたりするのですが、この『夏御文』は明らかに僧侶宛に出されたものと思えます。しかも僧侶の中でも学問をする僧侶宛に出されている感がします。
内容的にも教学的な言葉が多く、平易ではなかったりします。また『安心決定鈔』からの引文が多いのも特徴的だと思います。『安心決定鈔』は著者不明でおそらくは浄土宗西山派の書物といわれています。しかしながら蓮如上人はこの書物を大切にされてここから適宜言葉を選んで使用されています。有名な「機法一体」も元は『安心決定鈔』にも出てくる西山義の言葉ですが蓮如上人が使われる際の意味内容は西山義とは異なっています。
今回の『夏御文講義』ではこの『安心決定鈔』との関係がどう講義されるのかがちょっと楽しみでしたが、そこまで詳しい講義はなかったと感じました。もっと御文章についての全般的な講義という印象です。